希少楽器サリュソフォーンについてさらにディープな話
前回の記事でサリュソフォーンの基本について書きましたが、さらに分かっている事をどんどん書いていきます。
コントラバスサリュソフォーン
サリュソフォーンの最低音はバリトン以外のサキソフォーン同様にシ♭です。比較的多いEb管では実音Dbになりますが、スペイン狂詩曲、ディオニソスの祭りでで出てくる一番低い音はCであるため、半音足りないことになります。フランスのオーケストラはおそらく、コントラファゴットと最低音が同じBbになるC管を使っていたと推測します。C管であればそれらの最低音が足りることになります。
非常に稀少な楽器で、幸運にも借りる機会があった場合に注意しないといけないことがあります。それは古い楽器が多いので金属管がさびている場合があり、触ると腐食臭が手につくことになります。この状態でファゴットなど他の楽器に持ち替えるとその臭いが付いてしまいます。それを防ぐためにもマーチングで使うような手袋をはめて演奏すると良いかもしれません。
サリュソフォーンの吹奏感は意外と軽いです。ファゴットやコントラファゴットよりも抵抗感が少なくて吹きやすいです。運指もサキソフォーンに似ていて合理的で覚えやすく(親指のオクターヴキーの切り替えだけ苦労する)、習得するのにさほど時間はかからないと思います。少なくともファゴット奏者がバソンを習得するよりも楽だと思います。
音量のダイナミクス幅も大きくサウンドの中で存在感があり、金属管とはいえコントラファゴットやそれ以上に太く柔らかく豊かな音がします。大編成の吹奏楽団ではとても効果的で実用的な楽器だと思います。実際に吹いてみてその吹きやすさや響きの良さからも、吹奏楽でもっと使われても良いのではと思わされる楽器です。
ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団ではかつてディオニソスの祭りでサリュソフォーンを使用していました。ギャルドが来日した時に聞きに行きましたが、その時はコントラフォルテを使用していました。この楽器も非常にダイナミクス幅のある楽器であり、サリュソフォーンの代わりを担える楽器と思います。
コントラバスサキソフォーンと同じ音域を持ち、それよりも息が少なくて済んだり重量が軽かったりと実用的であるため、サキソフォーンアンサンブルでも使われる場合もあります。管が細いため重量はバリトンサックス程だと思われます。Tubaxというコントラバスサキソフォーンを細くした楽器があり、それと位置づけは似ています。
エッペルスハイムはサキソフォーンをベースに製造しているため、キー機構はサキソフォーンそのものになっています。そのため個人的には厳密にはサリュソフォーンとは言えない気がします。とはいえ歴史と共に合理的に進化してきたサキソフォーンと同じように進化したとするとそのような形になるのかもしれません。
コントラバス以外のサリュソフォーン
コントラバスサリュソフォーンは稀少ですが、他の音域の楽器はさらに稀少です。画像はイリノイ大学のサリュソフォーン一属を参照。以下に動画を載せます。
Soprano Sarrusophoneの動画
Bass Sarrusophoneの動画
■Bass Sarrusophone by Michel Jolivet
https://www.youtube.com/watch?v=n6Y2uiydezE
変形型
サリュソフォーンをサキソフォーンの形状にした楽器としてロスフォーン(Rothphone,Saxorrusophone)があります。見た目はダブルリードで吹く細めのサックスといった感じです。音色はおそらくサリュソフォーンと同じと推測します。画像はこちら。以下にBaritoneの演奏が少しあります。
■SAXOPHOBIA Live (con sottotitoli)
https://www.youtube.com/watch?v=v0tFp2_H3R8&t=67s