ファゴットの魅力よ伝われ!「関ジャム 完全燃SHOW」でファゴット特集

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昨日7月28日にテレビ朝日で放映の「関ジャム 完全燃SHOW」でファゴットが特集されました。

「知ってるようで知らない…マイナー?だけど音は最高な楽器特集!」で「ファゴット」「タブラ」「二胡」「アルプホルン」の4つの楽器をそれぞれ紹介する内容でした。

最初はなぜこの4つの組み合わせ?と思いましたが、打楽器、弦楽器、木管楽器、金管楽器から1つずつピックアップという形だったのでしょうね。

ファゴットはプロ奏者の石川晃氏が登場し解説していました。最近"ALLURE"(アリュール)というソロCDを出された方です。

・サイン入りCDジャケット石川晃・ALLURE

解説されていた内容別に(見出しに示しています)、ファゴット愛好家の1人として自分の思う事を書いていきます。

合奏の中で目立たない、音が聞こえづらい

ファゴットはオーケストラで発展し、フルート、オーボエ、クラリネットと共に4つの木管楽器でアンサンブルをします。低音域のファゴットは、他の3つの木管楽器の音色を損ねることなく低音の仕事ができる、と何かの本に書いてありました。

ファゴットは独特の柔らかい響きで心地よいアンサンブルの土台を作ります。音域が低く柔らかい音色なので目立つことは少ないですが、美しいオーケストラの木管サウンドには欠かせない重要な存在です。

ファゴットは弦楽器のヴァイオリン属とも非常に相性が良いです。一部の素材が同じということもあるかもしれませんが、柔らかくて溶け込みやすい音色が、特にヴィオラ、チェロ、コントラバスと一緒に演奏すると芯と響きが加わり、魅力的な響きになります。

オーボエとヴァイオリンが一緒に演奏すると比較的両方が聞き分けやすいですが、ファゴットと弦楽器だと一体化してファゴット単独の音としては認識しづらいかもしれません。目立たないですがファゴットでないと作れない魅力的なサウンドを作っているのです。

・存在感のあるステージ上のファゴットステージ上のファゴット

肺活量があまり必要ない

ファゴットは同じダブルリード楽器のオーボエと同様にとても細い管から息を入れるため、他の楽器と比べると必要な息の量は少ないです。

同じ木管楽器ではクラリネットやサキソフォーンのようなシングルリードはマウスピースの段階で管が太く、サキソフォーンはさらに管が広がるので沢山の息が必要になります。その結果大きな音が出せますが、息のコントロールが難しそうな印象があります。

ファゴットは実際に初心者でも簡単に音を出すことができるほど必要な息の量は少ないです。ですが引き込まれるようなダイナミックな表現をするためには、しっかり圧力のある深い息を使い息のコントロールが必要になります。

息を沢山入れても爆裂的な音はしない楽器なので、他の楽器ほど息の使い方には悩まずにめいっぱい表現することができると思います。

・細いファゴットのボーカル、リードファゴットのボーカル、リード

プロ使用の楽器は100~700万円

石川氏の楽器は最高峰のメーカー「ヘッケル」社製です。ヘッケルはプロ奏者がこだわって選ぶ最上級のメーカーです。

現在のファゴットは「ヘッケル式」と呼ばれており、まさにこのヘッケル社の楽器が現在の仕様のファゴットそのものです。このメーカーは完全オーダーメイドであり、納期は10年と長く、価格は700万円と非常に高価です。

そのように書くとファゴットに対して大きなハードルを感じるかもしれませんが、他にも沢山のメーカーがあります。価格は初級クラスで60万円~100万円、中級クラスで100万円~200万円、上級クラスで200万円~という感じだと思います。

これらはオーダーメイドではなく大きな楽器店やダブルリードの専門店ですぐ買う事ができます。他の楽器と比べると確かに高いですが、学校の備品楽器は初級クラスが多く、紹介されていたヘッケルはプロ使用の極端な例だと思って下さい。

・私が使用するモーレンハウエルのファゴット(定価210万円)モーレンハウエルのファゴット

プロは練習よりリード作りの時間が長い

ファゴットは「ダブルリード」というものを吹いて演奏します。植物の葦(あし)を細長くカットしたものを2つより合わせ、先端を薄く削って振動しやすくした構造のものです。

クラリネットやサキソフォーンの「シングルリード」と比べて構造が複雑で、製作するのに手間がかかります。プロ奏者やアマチュア奏者でもこだわりがある人はこれを自作することで、思い通りの音を出せるようにします。

リードは大きな楽器店やダブルリード専門店やプロ奏者個人から、「完成品」を買う事ができます。現にアマチュア奏者のほとんどは完成品リードを購入していて、製作の手間を大幅に削減することができます。

1本2千円台後半からと高価ではありますが、製作には長い経験、時間と手間が必要なため、そのぐらいするのは仕方ないことです。リードは自作できなくても演奏は可能(作れる人はあまりいない)という事は知って欲しいです。

・ファゴットのリードファゴットのリード

左手親指が大変

ファゴットの左手親指側には最低でも9個のキーがあります。サキソフォーンは1つ、フルートやオーボエやクラリネットは2つなので、その極端な多さは際立っています。

この構造は他の楽器と比べて低音域側の管が相対的に長いこと、オクターヴキーが整備されていないことに起因します。3つを同時に押すという運指もあり、左手親指キー群はファゴットの運指の難しさを象徴する存在でもあります。

ファゴットは他の木管楽器と比べて古楽器のようなシンプルな構造に留まっています。他の楽器は合理的なキー機構への改善が進み、比較的分かりやすい運指で演奏できるように変化していきました。

ファゴットにその合理化が進まなかった要因は、その音色を損ねる事になるからだと言われています。この独特で魅力的な音色が何よりも大事ということです。難しいとはいえ中学生でも演奏できているので、結局は慣れればなんとかなるものです。

・ファゴットのキー、上の集中している部分ファゴットのキー

ファゴットが使われている曲

実演していましたが「魔法使いの弟子」「ドラえもん」、これは定番です。これらのように誰もが聴いたことがあるけどどんな楽器で演奏しているのか知らない、ということが現実だと思います。

ファゴットは音域が低く音が柔らかくて目立たないため、あまり音色が認識されにくい楽器です。ですが実際にはテレビでその音がかなり多く利用されています。

ファゴットがよく利用されるシーンとして、1.素朴なシーン、2.コミカルなシーン、3.物悲しいシーン、4.さりげないシーンがあります。

1.素朴なシーンは、ドラえもんやジブリ(特に魔女の宅急便)などのアニメや、最近では「チコちゃんに叱られる」の縁側コーナーの初めに使われています。音を短く切るスタッカートも使われます。

2.コミカルなシーンは、特に子供や動物などがいたずらをしたり、ひょうきんな行動をしたりする場面でBGMとして使われます。こちらもスタッカートが活用されます。

3.物悲しいシーンは、一例としてドラマ「相棒」で悲壮感あふれるシーンで高音域を使って感情あふれるように滑らかに歌うような演奏をしています。

4.さりげないシーンは、前述の通りファゴットが他の音(や声)を阻害しないので、静かなシーンでファゴットが裏でこっそりメロディーを滑らかに吹いているということがよくあります。

・ドラえもんと言えばファゴットドラえもんと言えばファゴット

ファゴット奏者はみんな仲が良い

ファゴットは音が目立たないこと、人数が少ないこと、知名度が低いことからコンプレックスを持ちがちです。特に中高生で盛んな吹奏楽では顕著です。

でもみんなファゴットの魅力を感じていて、ファゴットのことが大好きで、なんとかその魅力を知ってもらいたいと思っています。

縁の下の力持ちという楽器の性格に似て優しくて落ち着いた人が多く、みんな良い人達だと感じています。そんな自分たちは団結力があります。同じ悩みを持つ者同士、出会えば共感してすぐ仲良くなります。

多くの団体でファゴットの人数が足りていないので、お互いにその穴埋め(エキストラ)をし合います。マイナーだからこそお互いを尊重し助け合うネットワークがあり、沢山の演奏機会がある楽器でもあります。

・ファゴットだけのアンサンブル曲もありますファゴットアンサンブル

終わりに

思いのほか長文になってしまいました。このようにファゴットがテレビで特集されることはほとんどないのでとても貴重な機会だし嬉しい事です。番組でも出演者の皆さんにも好評だったように思います。

ファゴットはドラえもんとかディズニーやジブリなど、音は誰でも絶対聞いたことがあるはずですが、どんな楽器なのか知られていないのが現状です。またファゴットは吹奏楽で演奏している人の割合が多いと思いますが、音量が大きくない事、演奏が難しい事、リードなどに費用がかかる事など、報われないイメージがあると思います。

そんなマイナスイメージの多いファゴットですが、単独で特集されると改めて良い楽器だなと思いました。吹いてる本人が一番感じていますが、ファゴットにしか出せない落ち着いた柔らかな響きは本当に魅力的です。長い管からにじみ出る心地よい響きを間近で体感したら、誰もがファゴットを好きになると思います。そういう機会が増えるといいなと思います。

・ファゴットの音を体感してほしいファゴットの音を体感してほしい

大きな音を出して目立つだけが楽器ではない、ファゴットにはファゴットの役割と魅力がある。ファゴットを吹いていて悩める人達にも刺激になっていたらと思います。ファゴットの認知度が上がり興味を持つ人が増える事を願います。

・ファゴットとコントラファゴットで豊かに生きていますファゴットとコントラファゴット

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Written by みやだい

ファゴット一眼レフ風景写真が好きな「みやだい」です。コントラファゴットやファゴッティーノやバソンも所有、風景写真は定期的にテレビ等に提供しています。旅行、猫も好きです。真面目マイペース平和主義、前向きでいたい。
X(旧Twitter) → @iadayim



記事へのコメント

\コメント(2件)/

[1] スズキ  2023/08/14(月) 18:23

ファゴットってやっぱ素敵ですね。

[2] みやだい  2024/02/04(日) 22:33

>スズキさん
大変遅くなりましたm(_ _)m
嬉しい感想をありがとうございます。
今後もぜひファゴットをご注目頂ければ幸いです。

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