黎明期の雰囲気を感じられ、吹奏楽とは何かを考えさせるホルストの原典版スコア
ホルスト作曲の「吹奏楽のための第2組曲ヘ長調」のミニスコアを購入した話について書きます。
ミニスコアを購入
アンサンブルに使おうと思い、ホルスト作曲の「吹奏楽のための第2組曲ヘ長調」(日本楽譜出版社、校訂・解説:伊藤康英)のミニスコアを購入しました。
この曲は第1楽章のマーチで長いユーフォニアムソロがあり、その親しみやすい旋律が魅力的です。第1組曲と共に吹奏楽の古典の名作の1つです。
このスコアはその原典版ということで、現在の吹奏楽曲とは雰囲気が異なります。20世紀初頭の編成やオーケストレーションを感じられてとても興味深いものでした。
編成の違い
気になったことはの1つは編成で、サックスはアルト1、テナー1のみ、バリサクやバスクラなしでファゴット2という編成。現在より木管中低音が薄くなっており、すっきりした印象です。
その分ファゴットは現在より相対的に重要度が高いといえます。当時はおそらくオプションという概念はなく、この曲や当時の編成にはファゴットが欠かせないといえます。
サックスの使い方も新鮮で、2本しかないことと、どちらかというと弦楽合奏のViolaのような、主体的というより高音楽器に対して内声的な使い方になっている感じがしました。
サックスがファゴットと一緒に4声でハーモニーを作っている箇所も印象的でした。サックスの使い方や役割が変化していったことを感じられます。
ピッコロはC管ではなく、Db管が使われているのも独特です。現在ならフルートとオクターヴのC管が分かりやすいですが、当時は移調楽器の考えが少し違ったようです。その辺の話も知る事ができます。
考察する面白さ
第1楽章のマーチについては、現在は抹消されている「初稿譜」も載っています。抹消理由は不明と書かれていますが多くの人は存在すらしらない譜面だし、それを演奏してみたり、なぜ抹消されたのかを考察してみるのも面白そうです。
その他にも現在との様々な違いを感じる事ができ、発見があります。現在の編成で演奏するためのスコアというより、歴史を垣間見ることができるスコアという感じです。
作曲の経緯から楽器編成、元になった歌などの解説も充実していて興味深く、スコアというより曲の歴史の本を読んでいるような感覚で楽しめました。
終わりに
吹奏楽の黎明期の歴史に触れる事で、オプションとかコンクールとか部活とかそういう概念が入る前の純粋なミリタリーバンドはこういう雰囲気だったんだなぁと感じさせられます。
先入観にまみれている吹奏楽とはそもそも何なのかを考えさせられます。吹奏楽というものを改めて客観視し、理解をより深めるためにもこのシリーズは良い本だと思いました。ぜひ手に取ってみて下さい。