デュカスのバソンの考察 ~ ヘッケル式ファゴットに似せたバソンも登場
デュカスというメーカーのバソンについて調べて考察してみました。
バソンと主なメーカー
バソンとはビュッフェ式(フランス式)のファゴットのことです。現在はヘッケル式(ドイツ式)のファゴットが主流のため絶対数は圧倒的に少ないのが現状です。
現在日本で見かけるバソンのメーカーはビュッフェ・クランポン(Buffet Crampon)とデュカス(Ducasse)があります。
かつてはクランポン同様にサックスやクラリネットで有名なヘンリー(アンリ)・セルマー(Henri Selmer)も製作していましたが現在はラインナップから消え、そこから独立した技術者のブランドがデュカスのようです。
・ファゴット(シュライバー)とバソン(クランポン)の外見の違い
デュカスのバソンはどんな楽器?
日本でバソンを最も扱っているであろう大阪のアトリエアルファさんで以前試奏したことがあります。
その時の感想は、クランポンの方が音が細くて操作が若干難しく、デュカスの方が音が太くて操作がしやすいと感じました。クランポンは伝統を守っている楽器、デュカスはファゴットに似せて進化させている楽器という印象を受けました。
デュカスの特徴としては以下が挙げられます。
- ダブルジョイントにファゴットと同じ親指Bbキーが追加されている
- ダブルジョイントにファゴットと同じ2つのF#キーがある(Fキー連動も)
- ダブルジョイントのLowEホールがカバードキーの仕様もある
- ファゴット同様にハンドレストが付いている
このようにファゴットを意識した仕様となっています。セルマーのバソンはこのような仕様ではなかったし、バソンの歴史上でも大きな変化といえるのではないでしょうか。
さらにファゴットに近い仕様を発見
さらにデュカスについて調べたところ、こちらのページに行き当たりました。このデュカスは特注だとは思いますが、面白い動きがあります。
https://www.darynzubke.com/ducasse-french-bassoon/
※リンク先の画像を参照下さい(画像を引用しない主義なので)
- 左手小指にあったウィスパーキーとC#キーがファゴットと同じように親指に移動している
- 左手親指にあったLowEb,Dbキーがファゴットと同じように小指に移動している
このようにバソン特有の機構が、ずいぶんファゴットに近い機構に変化しているものでした。特に中低音はほぼファゴットと同じ運指で演奏が可能です。ここまでファゴットに寄せた構造にしていることに、正直驚きを感じました。
機構以外にも、試奏した時にはデュカスの方が管が太く、ファゴットに近い柔らかい豊かな響きという印象を受けました。音量の大きさ、音程の正確さを求めてファゴットの方が選ばれてきた時代の流れに沿った変化といえるのかもしれません。
機構がファゴットに近いということは、ファゴットからの転向がしやすいということでもあり、バソンに興味がある私にとっても障壁が下がった気がします。
終わりに
近年オフィクレイド(テューバの前身、ベルリオーズの幻想交響曲などで使用)などピリオド楽器のリバイバルブームが来ているようですが、バソンも注目を集めているのかもしれません。
思えばラヴェル、ドビュッシーなどフランスの作曲者はバソンを想定しているはずです。バソンの方が音に主体的な存在感があり、高音域も軽々と歌い上げることができます。現在はフランス料理にドイツの味付けをしているようなもので、本質を求めていずれバソンも使う時代が来るのかもしれません。
バソン参入障壁を下げるデュカスがどのぐらい普及するのか、どのように変化していくか、今後も追っていきたいと思います。
・ファゴットとバソンの比較演奏
P.S.ここまでバソンに興味を深めている状況なので、日本バソンの会に入会すべきですかね(^^;
※追記:後日ビュッフェ・クランポンのバソンを購入しました!
【関連】
・「ファゴット」と「バソン」の違い
・ビュッフェ・クランポンとデュカスのバソンを試奏しました
・縁があり状態の良いビュッフェ・クランポンの中古バソンを購入!