【演奏会感想】東京佼成ウインドオーケストラ 第151回定期演奏会~吹奏楽本来の魅力と可能性

        音楽-管弦楽・吹奏楽

吹奏楽、管弦楽でファゴットを年中演奏して豊かに生きている人間です。2020年11月7日(土)に東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)の第151回定期演奏会を大学時代からの音楽仲間と共に聴きに行きました。演奏会の感想と、それに触発されて吹奏楽に対して感じた事について書きます。

・演奏会ポスター/diary_picture/202011/101.jpg

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演奏会の概要

東京芸術劇場で開催されたTKWOの第151回定期演奏会を聴きに行きました。楽団創立60周年記念ツアーの初日の東京公演という位置付けです。

芸劇では演奏したこともありますが改めてきれいで良い響きのホールでした。新型コロナウイルスがまだ完全に収まっていないので、客席は1席ずつあけた状態での公演となりました。

・東京芸術劇場/diary_picture/202011/103.jpg

今回の演奏曲目は下記の内容です。

  • 吹奏楽のための第一組曲/ホルスト
  • 水面に映るグラデーションの空/芳賀傑
  • リンカンシャーの花束/グレインジャー/フェネル 校訂
  • 吹奏楽のための交響曲 第3番(TKWO委嘱新作)/保科洋

吹奏楽ファンなら誰もが知る吹奏楽の古典「ホルスト一組」から始まり、保科洋氏の委嘱作品もある注目の曲目でした。指揮は正指揮者の大井剛史氏です。

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演奏会の内容と感想

演奏を聴いた感想としてはさすがプロの演奏、温かく豊潤な解像度が高いサウンド、粗がなく繊細で美しくよく調和している、本当に素晴らしい演奏でした。吹奏楽でこんなに魅力的なサウンドが作れるんだと心を動かされました。

最初のホルストの「吹奏楽のための第一組曲」から引き込まれました。緊張感の中で始まる落ち着いた低音の美しい響き、そしてテーマを様々な楽器が安定的に受け継いでいく。全楽章通して各楽器の個性が活かされて、飛び出すこともなく落ち着いた響きでよく調和している。指揮者から伝えられる決め所の表現はしっかり伝わってくる。よく知られた曲ながら、そのイメージよりも洗練された質の高い演奏に聴き入りました。

・ホルストの第一組曲のスコア、演奏と同じ校正版/diary_picture/202011/104.jpg※今回は例のバリトンのソロの音はFで演奏

芳賀傑作曲の「水面に映るグラデーションの空」とても幻想的な曲でした。静寂から様々な音の色が優しく浮き出てきては消える。波紋を表していると思われるトリルも印象的。オルガンのような安定的な低音楽器に支えられ、夢見心地のような感情にすーっと入ってくるような甘美なサウンド。東日本大震災等がきっかけで書かれ、真島俊夫氏への想いも詰まった曲でもあり、とても伝わってくるものがありました。

グレインジャー作曲の「リンカンシャーの花束」、演奏したことがあり難しい曲ですがとても安心して聴けました。サウンドはホルンと田中靖人氏のソプラノサックスの組み合わせが特徴的。3楽章の変拍子の中でファゴットを含む各ソロがフーガのようにずれて進行する所は見事に進行して聴き入りました。トランペットの落ち着いた所やソロやサウンドを輝かせる所も素晴らしかったです。バリエーションに富み様々な楽器に要素がある曲で、多彩な表現を聴くことができました。

2部は委嘱作品の保科洋作曲「吹奏楽のための交響曲第3番」。3つの楽章からなり、交響曲的なスケール感とサウンドの美しさに、吹奏楽らしいキャッチーなリズムの部分も見られました。緩楽章の2楽章はファゴットのソロで始まりトロンボーンのソロも何度かあり、各楽器の優美な表現をじっくり聴くことができました。3楽章も含め全体的に吹奏楽らしい憂鬱さのあるダイナミックな進行というか、感情を動かすような雰囲気に聴き入りました。吹奏楽にまた名曲が生まれました。

・演奏会曲目/diary_picture/202011/105.jpg

1部、2部共演奏後は長い温かい拍手が続きました。会場には芳賀傑氏、保科洋氏もお越しになり拍手を受けられていました。体調が心配される保科氏はお元気そうで安心しました。

アンコールは保科洋作曲の「インテルメッツォ」、演奏前には指揮者の大井剛史氏のコロナ禍での来場や60周年への感謝のコメントから会場の雰囲気が和らぎました。吹奏楽コンクール課題曲でもあったこの曲。派手さのない優美な旋律が織りなすこの曲で、静かに上品に演奏会の幕を閉じました。優しい気持ちになる、大変良い後味でした。

・興奮冷めやらぬ終演後/diary_picture/202011/102.jpg

触発されて感じたこと

上質な演奏を体感し、吹奏楽本来の素晴らしさと可能性を改めて感じる事が出来た素晴らしい演奏会でした。吹奏楽は吹奏楽なんだ、オケにコンプレックスを持たなくていいんだ、こんなに豊かな価値を生み出すことができるんだ。まさに芸術だという感じがしました。

普段聴いている吹奏楽部、吹奏楽団の演奏と比べて落ち着いた安定的な響きが印象的でした。誰かの音が突出して荒げることなく、ホールに響いて調和した包み込むような解像度の高い美しいサウンド、あの素晴らしい響きは忘れられません

・刺激を受けた演奏会/diary_picture/202011/106.jpg

自分たちもぜひこういうサウンドを目指したい。そのためには個々の技量の向上はもちろんですが、サウンド作りに対する意識も変えないといけないと思います。個人個人がいかにも「吹いている」という感じに力まずに、全体で作りたい美しいサウンドの形をイメージして、それを表現するように音を添えていく。そんな意識が必要に思えます。

編成にも特徴があります。団体名は「ウインドオーケストラ」ですが、実態は「ウインドアンサンブル」(1人1人がソロ的な編成)に近いように思えます。特にサックスやフルートが1パート1人なのは印象的です。個人的にはこのバランスが好きで、全体がすっきり落ち着いて飽和しにくくなり、個々の楽器の響きが活かされやすいです。

・TKWOのステージ上の写真(演奏会パンフレットより)/diary_picture/202011/107.jpg

吹奏楽とは何なんだろう。常に考えている事ですが、それぞれの経験する環境が非常に多彩で、その認識には多様性があると思います。今回のTKWOや過去にギャルドを聴いた経験からも、吹奏楽が目指すべき方向性を示された気がします。ここから感じ取って活かしていくことが大事だと思います。

本物に触れて、「吹奏楽部」の延長ではない「本当の吹奏楽」の追求をますますしたくなりました。このような上質なサウンドが作れるならば、大きい音でごまかしたりコンクールのための対策を意識するのではなく、純粋に「音楽の表現」を追求して、もっと「芸術」として認知されたい。吹奏楽にはもっと可能性がある、もっと追及したい、そんな意欲をかき立ててくれました。

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終わりに

吹奏楽でこんなに素晴らしいサウンドが作れるんだ、吹奏楽って本当に魅力的なものだ、そう思わせてくれるとても素晴らしい演奏会でした。触発されて吹奏楽の追求への意欲も高まりました。吹奏楽がますます好きになりました。

まだまだ世の中の状況は厳しいですが、吹奏楽をやっている人達には素晴らしい生演奏をホールに聴きに行って刺激を受けてほしいです。中高生はもちろん、大人の私にとっても一生追及し続ける程の奥が深いものです。吹奏楽は人生を豊かにしてくれる大切なものです。

・今後の演奏活動に活かしていきます(コントラファゴットも所有しています)/diary_picture/202011/108.jpg

演奏会の情報

東京佼成ウインドオーケストラ 第151回定期演奏会
~楽団創立60周年記念ツアー 東京公演

【会場】東京芸術劇場 コンサートホール
【日時】2020年11月7日(土) 開場13:00、開演14:00
【指揮】大井剛史(正指揮者)
【曲目】
・吹奏楽のための第一組曲/ホルスト
・水面に映るグラデーションの空/芳賀傑
・リンカンシャーの花束/グレインジャー/フェネル 校訂
・吹奏楽のための交響曲 第3番(TKWO委嘱新作)/保科洋
・アンコール:インテルメッツォ/保科洋

・演奏会ポスター/diary_picture/202011/101.jpg


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