【演奏会感想】令和初日のバソンのコンサート「バソンの世界」
令和最初のイベントは、バソンの第一人者小山清先生の演奏会「バソンの世界」を聴きに行くことでした。バソンはファゴット以上にマイナーであり、生で演奏を聴くことができるとても貴重な機会です。
会場は紀尾井ホール。赤坂御所の近くにあり、午前中には即位の儀式のため新天皇皇后両陛下が車で近くを通られていました。
・会場に到着
・開演前の様子
演奏会の感想
曲目はバロック、現代曲、和、朗読伴奏と多彩でした。
第1部は「バソンと弦楽オーケストラ」と題してオケをバックに小山先生が演奏しました(1曲目はフルートと共に)。もう一方オケ側にバソン奏者が居てオケに調和しつつ芯を加えていました。前の2曲はチェンバロも加わったバロックサウンドで、ファゴットとも違う芯の通ったバソンの響きが素直な和声の中に調和して感じられました。3曲目は現代曲で雰囲気が一転し、緊張感のある不協和音の中にバソンが浮かび上がり、バソンが得意とする最高音域も活用されていました。時代を越えたバソンの音色を聴くことができました。
第2部は「日本の雅」。オケなしでピアノ、フルート、朗読との組み合わせで登場し多彩な曲目でした。陸前高田の奇跡の一本松で作ったボネ(ベルジョイント)を用い、楽器として生まれ変わりその魂を吹き込まれていました。バソンの素朴で優美な音色は和の表現に合う気がしました。特に印象的だったのは尺八の奏法を模倣した息を吹きつけるような奏法や、ポルタメントを活用した奏法で、バソンの可能性を広げているように感じました。朗読伴奏も斬新で聴き入りました。
バソンの演奏を生で聴いて感じたことは、ファゴットと比べて芯がありつつダイナミクスは小さめで、あまりビブラートをかけずにまっすぐな素朴な音で歌うのかなということです。悲鳴のような最高音域も特徴の1つとして使われます。音程は取りづらく速い動きもあまり得意でないように感じましたが、合理的で便利な道具が優れているというわけでもなく、総合的にこのキャラクターがバソンの味わいなのだと思います。
終わりに
貴重なバソンの多彩な演奏を堪能する事ができました。バソンにはバソンとしての、ファゴットともまた違う味わいの魅力があります。小山先生はフランス伝統楽器で新たな可能性の追求を追求され、陸前高田の魂も込めて、唯一無二の素晴らしいバソン奏者だと思います。新たな時代に願いを込めた素晴らしい演奏会でした。難しい楽器ではありますが、今後も練習を頑張ろうと刺激になりました。
・演奏会パンフレット
バソンの世界
【日時】2019年5月1日 (水/祝)開演14:00 (13:30開場)
【会場】紀尾井ホール
【入場料】
一般:前売り 3,500 当日券 4,000
学生: 大学生 1,000 小・中学生 500
【出演者】
小山清 (バソン) / ピエール・モンティ (フルート) / 原田愛 (ピアノ, チェンバロ) / 中原朋哉 (指揮, 第1部) / シンフォニエッタ 静岡 (弦楽アンサンブル、第1部) / 松波恵子 (チェロ) 特別出演、第1部 / 野村和代(バソン)特別出演 /小林礼子 (朗読) 特別出演
【曲目】
◆第1部 ーバソンと弦楽オーケストラー
ブレバル/フルート、バソン、弦楽オーケストラのための "シンフォニア・コンセルタント"
ヴィヴァルディ/バソン協奏曲 イ短調 RV497
大澤徹訓/バソン協奏曲 ~バソン、弦楽オーケストラ、ピアノのための (世界初演)
◆第2部 ー日本の雅ー
山口博史/フルート、バソンとピアノのための "夏の三重奏"
武満 徹/フルートのための "巡り"
田中雅明/バソンとピアノ "秋の月" ~作曲者不明~:"鹿の遠音"
吉松 隆/三つの白い風景 フルート、バソンとピアノのための
宮沢賢治/雨ニモマケズ