ファゴットとコントラファゴットの運指の違い(初級者向け)

    楽器探究

コントラファゴットはファゴットよりもオクターヴ低い楽器です。同属楽器ですが両者にはキー機構・運指の違いがあり、別途覚える必要があります。それについて初歩的な覚え方を紹介をします。

【2023.10.18更新】文章を改善しました。

運指タイプ別に低音域から順に違いを見ていきます。コントラファゴットの音域別運指

※Amati社製の楽器での例です。メーカーや機種、製造時期によって異なる場合もあります
※親指キーの右側の列は、IDRS運指表の表記に倣い、上からdキー、cキー、c#キーと呼ぶことにします。コントラファゴットの左手親指キー

1.ウィスパーキーがない

コントラファゴットにはウィスパーキー(ピアニシモキー)がないことが特徴です。ファゴットで押している中低音域では、それに相当する左手親指キーは離します。

Aの例:
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x x x | x x o
親指なし
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2.中音のD#/Ebの運指が異なる

ファゴットと同じクロスフィンガリングのEb運指は使えません。音のツボが大きく異なり、少し低めのEぐらいの音が鳴ります。

コントラファゴットでは中指・薬指キーの間にあるD#キーを使います。D運指にD#キーを押してトーンホールを開くとでD#に上げる方式です(ファゴットにもトリルキーとして存在する機種がありますね)。

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x x Eb o | o o o
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古い楽器はそのキー1つしかありませんが比較的新しい楽器には、右手親指キーの一番上、または右手人差し指キーの上に替え指キーがある機種もあり操作性を増しています。

3.ハーフホール代わりの運指

ファゴットでは中音F#・G・G#は左手人差し指のハーフホールを使いますが、コントラファゴットではトーンホールが大きい事とキーの配置が異なるために同じような運指が不可能です。

コントラファゴットではそれらの音は左手人差し指を完全に離す運指を使います。またGの場合の小指は不要です。

Gの運指:
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o x x | x x x ※小指も不要
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実はコントラファゴット特有の機構として、人差し指で押さえるトーンホールが2つに分かれており、中指キーを押してもその片方が連動して閉じることでハーフホール相当のキーワークが実現しています。

※私見ではG#の弱音の場合、親指cキー(中央)を足した方がツボが安定する気がします。

4.左手親指のフリックキーが異なる

中音A~C#では、親指cキー(中央のキー)を押します。ファゴットではフリックキーのAキーとCキーが別々ですが、それらが1つに統合されたような役割のキーでありむしろ楽になります。

※押すと音程・音色補正か何か分かりませんが、連動してLow-Eキーが閉じるようになっています。

またファゴットの場合はフリックキーとして途中で離しても平気ですが、コントラファゴットでは押している間だけオクターブ上がるため、常に押している必要があります。

Aの運指:
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x x x | x x o
 c
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Bbの運指:
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x x x | x x o
 c  Bb
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Bの運指:
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x x x | x o o
 c
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Cの運指:
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x x x | o o o
 c
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C#については、以下2つの方法があります。

C#の運指1:
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x x x | o o o ※Cにc#キーを足したパターン
 c c#
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※強く吹きすぎると上のG#が当たる場合がある。

C#の運指2:
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x x x | x x x F ※Fgに似た運指、太めの音
  c#
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5.高音DからFはオクターヴ下に準じる

高音D~Fはオクターヴ下の運指+dキー(左手親指キーの一番上)を押す方式に変わっており、ファゴットと同じ運指は使えません。

※Dの音はツボが不安定な場合があり、右手中・薬・小指Fを追加すると安定する場合があります。

Dの運指:
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x x o | o x x F
d
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D#はD運指にD#キーを足しますが、私の楽器では音程が高くなるので、以下運指を使う場合もあります(次項で紹介する2つ目のFに移りやすいメリットも)。
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o x o | x x o
d   Bb
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Eの運指:
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x o o | o o o
d
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Fの運指:
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o o o | o o o
d
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6.高音F~Gは第3倍音を当てる

高音Fのもう1つの方法とF#・Gは、低音域のBb・B・C(+左手人差し指を省略)に親指dキーを押す、つまりオクターヴ半上の音(第3倍音)を当てる感じになります。

Fの運指:
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o x x | x x o
d   Bb
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F#の運指:
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o x x | x o o
d
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Gの運指:
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o x x | o o o
d
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終わりに

初級者向けにコントラファゴットの基本運指について解説しました。同族楽器であってもファゴットとはこれだけ雰囲気が異なり、おそらく他の楽器よりは差異が大きいはずです。

そのためコントラファゴットを担当することになったら、まずはその基本運指を覚えるための練習時間が必要になります。

コントラファゴットの譜面は中低音域がメインであり、そこまで激しい運動性を求められないので、ひとまずこれだけ覚えていれば最低限は対応できるのではないかと思います。参考になりましたら幸いです。

   

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Written by みやだい

ファゴット一眼レフ風景写真が好きな「みやだい」です。コントラファゴットやファゴッティーノやバソンも所有、風景写真は定期的にテレビ等に提供しています。旅行、猫も好きです。真面目マイペース平和主義、前向きでいたい。
X(旧Twitter) → @iadayim



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