ファゴッティーノ - Fagottino(Octave Bassoon)
希少楽器ファゴッティーノについて書きます。
【2021/10/12】現在このページは内容の改善作業中です。
ファゴッティーノとは?
「ファゴッティーノ」とは、小型ファゴットの総称です。少なくともファゴットより4度高いF管、5度高いG管、オクターヴ高いC管の3種類があります。F管はクイントファゴット、G管はクワルトファゴットとも呼ばれ、英語ではテナルーン(Tenoroon)と呼ばれます。
私が所有しているのはC管で全長がファゴットの半分の全長63cmと小型で可愛いファゴットです。重さはファゴットの10分の1の350gしかなくかなり軽いです。キー機構はバロックファゴットのようなシンプルなものになっています(近年モデルはより現代的な仕様に変わっています)。
C管の音色はファゴットよりも明るく軽快で、イングリッシュホルンよりも音の芯が太く、ファゴットらしく少し包まれたような質感の柔らかさがあります。スタッカートも「ポッ」という感じでファゴットらしさを感じさせます。
ボーカル径が一回り小さくなっており、ファゴットのリードは若干緩いので一回り小さいものを作るとスムーズです。小型のためかコントロールが難しい楽器で、正確な音程での演奏はとても難しいです。
小型ファゴットは本場ドイツでは子供用として普及しているようですが、日本国内では非常に希少な楽器です。確認できた範囲ではC管は2008年時点では国内で2本しかないようでしたが、近年取り扱い店が出来たためわずかに増えていると思います。
日本では情報が乏しいため詳しい情報は Wikipediaを参照(英語)↓
http://en.wikipedia.org/wiki/Tenoroon
音域と記譜
※実音の音域幅
C管ファゴッティーノの音域は実音表記で示すとヘ音記号第2線のB♭から、ト音記号第5間のFまでの2オクターヴ半です。但し、低いB(シ)は出すことができず、低いC#はハーフホール運指のため非常に不安定です(いずれも近年モデルは仕様変更により可能)。
音域を他の楽器と比べると、テナーサックスとアルトサックスの中間、オーボエのオクターヴ下(バスオーボエとほぼ同じ)で、テノールとアルトの中間ぐらいの楽器といえます。音域幅はファゴットより狭いです。
記譜は実音に対してへ音記号でオクターヴ低く記譜することで、移調楽器のように運指と譜面がファゴットと統一されます。
所有楽器の紹介
メーカー:Wolf (ヴォルフ)
機種:FG8plus professional model
定価:秘密
仕様:C管、9キー(oct,C#,Bb,F#,F,Ab,D,Bb)、銀メッキキー、全長63cm、350g
付属品:ソフトケース、棒状スワブ、ボーカル1本、ハーネスタイプのストラップ
購入経緯
Wolf社が小型ファゴット3種を製作していることをウェブサイトで知り、後にネット上のファゴット関係で知り合ったFさんが所有しているG管を吹かせて頂ける機会があり興味を持ちました。3種の内一番小さいC管をいつか欲しいと思うようになりました。
ある日、思い切ってWolf社と英語でメールでやりとりをし始めました(本来はドイツ語ですが英語でも返答がきました)。日本には恒常的な代理店がない(当時)とのことで個人への販売も問題ないとの回答でしたが、英語力不足のため明確な取引へ踏み込むことができず、購入には至りませんでした。欧州の通販サイトでこの楽器を扱っているショップに問い合わせをしても、日本への輸送はできないとの回答でした。
そこで今度はWolf社のファゴットを扱った事がある日本のお店に相談したところ取り扱い可能と返事を頂き、ついに手に入れることができました。メーカーから半年かかると言われていましたが、実際は3ヶ月程度で届きました。
楽器の詳細について
とても珍しい楽器なので楽器のパーツごとの詳細について紹介します。
テナージョイント同士を比較、キーは省略されていますが3つの指孔があるのは同じです。小さくて細くて可愛いです。
ダブルジョイントはGキーは指孔に変わっています。U字管は金属製ではなくコルクでふさいだような簡易的な構造です(キャップは外れません)。
ダブルジョイントの親指側、LowEは指孔に変わり、Bbキーのアクションもシンプルになっています。ハンドレストはありません。
ロングジョイントはバロックファゴット風でLowCは指孔に変わり、LowDとLowBbキー(ベルにキーがないためBではなくBbが出る)があります。C#はハーフホールで出します。
ベルの比較。外形のくびれの形はほぼ同じで、最低音のキーがありません。
ボーカルの比較。短くなりイングリッシュホルンよりも急角度です。ボーカル口は径が小さく素材は厚めです。メッキはニッケルかクロームだと思います。
全パーツ。1つ1つが小さいながらファゴットのような構造になっています。
リードについて
ファゴッティーノのBOCALはファゴットのものよりもわずかに径が小さいため、ファゴットのリードをそのまま使う場合には息もれ防止のためにBOCALの先端に細い糸を巻く必要があります。しかしこれではリードが楽器に対して相対的に大きいため、全体的に音程が不安定で、高音域も安定して出すことができません。
そこでファゴットのリードを若干小さめの寸法にしたものを何種類か作って試してみています。しかし単に小さくするだけでは実際にはなかなか安定した音が出せず、特定の音の音程・レスポンスが悪い場合もあり、様々な試行錯誤をしています。
BOCALへのフィットですが、当初通常のマンドレルを使用して4本ワイヤー(第3ワイヤー付近を2つに)にしましたが、BOCAL自体をマンドレル代わりに直接差し込む方が的確にフィットすることが分かりました(BOCALを痛めない程度に…)。
特定の音の音程が悪いことがブレード面積が広いことが原因かと思い、ショートスクレープも試しましたが、短すぎると発音が難しい(恐らくBOCALに厚みが大きいことも原因?)ことから断念。EnglishHornリードで試したら全く振動を起こすことができず、Oboe属よりは大きめに作らないといけないことを実感。
これらを元に、Fgと同じ作り方で全体的に寸法を小さくし、ブレードは若干広がりを抑えつつ(ただ狭すぎると低音域が出せない)、長さは少しカットする程度のバランスが最適かなという結論になりました。
※2022年現在、ファゴッティーノほとんど活用できてない状態で眠っています。もし使ってみたい方がいましたらレンタルを検討しますのでご相談ください。過去にはプロの管弦楽団での使用の試みのために貸した例もあります。 →お問い合わせフォーム