【動画】クラリネット全種類 ~ Ab管からオクトコントラアルトまで
2020.6.15 内容を再編しました。
私は普段ファゴットを吹いていますが、コントラファゴット、ファゴッティーノ、バソンを所有するなど楽器に対する興味が強いです。ファゴット以外にも希少楽器を中心に様々な楽器に興味があり、年中調べています。
そこで今回は様々な種類のクラリネットを演奏した動画を見つけました。そこに登場する楽器について解説します。
全楽器の動画
■The complete clarinet family by Cyrille Mercadier
最初の巨大な楽器は世界に3つしかないというOctocontralto Clarinet!
一番最後のHighD管?!は謎でしたが、コメントを見ると偽物のようです。
動画に出てくる各楽器について、楽器関係の書籍を調べたり共演した経験やクラ吹きの知人から聞いた情報を元に解説していきます。
Octocontralto Clarinet in Eb
オクトコントラアルトクラリネットは、ルブランが作った世界に数個しかない巨大な楽器です。コントラアルトクラリネットのオクターヴ下、エスクラの3オクターブ下の楽器です。
金属製のコントラバスクラリネットをそのまま大きくした形状で、最低音はLowCでピアノの最低音より低いです。恐らく特注品、試作品的な位置づけだと思われます。
その他、Bb管のOctocontrabassClarinetも存在するようです。※ページ一番下に動画を載せます。
Contrabass Clarinet in Bb
コントラバスクラリネットは吹奏楽やクラリネットアンサンブルで使われる中では一番低い音域の楽器です。バスクラリネットよりオクターヴ低い楽器で、吹奏楽ではオプション扱いの曲も多いです。
上の動画のものは「クリップ型」と呼ばれる金属製のLowCタイプです。似ているものでは同型のベルが少し下に来るLowDタイプのほか、直管型のLowEbタイプもあります。
H.セルマーやRipamontiは木製のLowCの楽器を製造しており、背が高くてインパクトのある外見です。高い座高が必要なためピアノ椅子で演奏します。
Contralto Clarinet in Eb
コントラアルトクラリネットはアルトクラリネットよりオクターブ低い楽器です。LowCタイプもありますがLowEbタイプの方が一般的です。最初の動画の楽器は金属製ですが、H.セルマー、ビュッフェクランポンは木製を製造している他、プラスチック製もあります。
用途はContrabassClarinetと同等とみなされることが多いですが、より機敏性があり区別して使う場合もあります。Eb譜がヘ音記号に近くて汎用的なベース楽器として使用でき、Jazzでも使用されることがあります。
リードはメーカーによりContrabassClarinet用(クランポン以外)やBassClarinet用(クランポン)に対応し、BaritoneSax用を使う例もあるようです。
Bass Clarinet in Bb
バスクラリネットは通称「バスクラ」と呼ばれるBb管クラリネットよりオクターヴ低い楽器です。用途は吹奏楽、管弦楽、クラリネットアンサンブル、ジャズ等で、クラリネット属の中では「ベークラ」に次いで多いです。
短いLowEbと長いLowCタイプがあり、LowEbはビギナーモデル的な意味合いと明るい音色からジャズでも使われます。LowCはより豊かな響きを持ち吹奏楽でも増えつつあり、管弦楽でも使用されます。特にLowCは高い座高が必要なため、ピアノ椅子に乗って演奏する事が多いです。
管弦楽ではヘ音記号の移調譜で書かれる場合もあります。かつてはA管も存在しましたが、Bb管をLowEからLowEbにすることで廃れました。LowCは昔ロシアで使われていたファゴット型の楽器がLowCで、後に現在の形になってからその低い音を出せるようにしたものと言われています。
Alto Clarinet in Eb
アルトクラリネットはクラリネットとバスクラリネットの中間の音域で、後者を小さくしたような形状をしています。主に吹奏楽とクラリネットアンサンブルで使用されますが譜面がない場合もあり、あってもオプション的な扱いで省略される場合もあります。
最低音はLowEbが基本です。同じ音域のバセットホルンとよく似ていますが、それよりも管が太く、よりダイナミクスのある大きな音が出せます。
Basset horn in F
バセットホルンはクラリネット属の中では歴史の長い楽器で、モーツァルトのレクイエムやグランパルティータなどで使用されます。元々はホルンという名前の通り角笛を模した曲がった形状をしていましたが、現在はアルトクラリネットのような形状に変えられ、最低音はLowCです。
管径は他の楽器の比率より細くてクラリネットと同じ径でマウスピースも共通ですが、メーカーによってはアルトクラリネットのマウスピースを使う楽器もあります。
調性はF管でアルトクラリネットより高いですが最低音は実音で半音低く、テナークラリネットと呼ばれることもあります。音色はアルトクラリネットよりも控えめで暗めです。
Basset Clarinet in A
バセットクラリネットはA管クラリネットの下管をLowCまで延長した楽器で、右手の親指側にも低音域のキーが追加されています。この楽器は元々バセットホルン用がベースとなったモーツァルトのコンチェルトを原曲通りに低い音も演奏できるようにするために作られています。稀にBb管も存在します。
※この動画は稀なLowBタイプ
Clarinet in A
A管クラリネットは主に管弦楽で♯系の調で使用されるA調の楽器です。Bb管より温かく柔らかい音色を持ち、最低音は実音C#です。
管弦楽ではBb管と共に必携の楽器の1つですが、吹奏楽では通常使われず、こだわりのある団体が使う程度です。マウスピース・リードはBb管と共通です。
Clarinet in Bb
「クラリネット」と言えばこの「ベークラ」が基本です。Bb管の楽器で、管弦楽、吹奏楽、ポピュラー、ジャズなど、非常に幅広く使用されています。最低音は実音Dです。
管弦楽では主に♭系の調で使用されます。吹奏楽では人数が多めで通常3パートあり、ヴァイオリンのような役割を担い、トップ奏者をコンサートマスターとする団体もあります。
Clarinet in C
C管クラリネットは主に管弦楽で使用されるC調の楽器です。譜面上はC-durの曲をinCで書いた場合と、C管の明るい音色が欲しい場合に分けられるように思います。アンサンブルではフルートなど実音の譜面をそのまま使う事もできます。
実際に指定される頻度は少なく、Bb管、A管ほど一般的ではないため所有者は多くありません。持ち替えの手間もありBb管等で代用される事も多いです。音色はBb管より明るめで、マウスピース・リードはBb管と同じです。
Clarinet in D
D管クラリネットは「小クラリネット」の中でD調のものです。後述の「エスクラ」に対し主に♯系の調で使用されます。
主に管弦楽で使用され、ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯のソロが有名です。マウスピース・リードはEbクラと同じです。
Clarinet in Eb
Eb管クラリネット(エスクラリネット)は「小クラリネット」の中でEb管のもので、通称「エスクラ」と呼ばれます。吹奏楽では標準編成に入ることが多いほか、管弦楽やクラリネットアンサンブルでも使用されます。
クラリネットよりも甲高く輝かしい音色を持ち、大きな音量ではフルートやオーボエを越えるような存在感があります。
小型の楽器の為音程のコントロールが難しいとされています。管が短いため上下管が分割できないタイプもあります。
Clarinet in Ab
Ab管クラリネットは最小のクラリネットで「アスクラ」と呼ばれます。エスクラよりもさらに甲高い音色を持ちます。非常に稀な楽器で一般には普及していません。用途も非常に限定的で、ごく一部の吹奏楽で指定されている曲は存在しています。
管体はエスクラよりもさらに短く、バレル部分が分離できなくなっています。リードもエスクラよりもさらに小さい専用のものを使います。ヴァンドーレン社のものは誤認を防ぐためにクラリネット、エスクラリネットに斜線を引いた絵になっています。
おまけ
そして、音はないですが一番低い"Octocontrabass Clarinet"が登場する動画です。確か1本しか造られなかったと思います。
[1] yossy 2021/11/25(木) 21:36
アルトクラリネットの説明文の2行目が
「状をしています。主に吹奏楽とクラリネットアンサンブルで使用されます"ます"が譜面がない場合もあ」と、ますが2重になっています。
[2] みやだい 2021/12/13(月) 10:27
> yossyさん
返信遅くなりました。文章訂正しました。ご指摘ありがとうございます。